【SUS303とSUS304の違い】切削性・耐食性・用途まで徹底解説

【SUS303とSUS304の違い】切削性・耐食性・用途・JIS規格まで徹底解説

ステンレス材料を扱う設計者や加工技術者にとって、SUS303とSUS304の違いは最も基本でありながら、実務上の選定で悩むポイントでもあります。
一見どちらも「オーステナイト系ステンレス鋼」として分類されますが、添加元素の違いによって特性が大きく変化します。
本記事では、JIS規格の定義から実際の加工・使用事例までを詳細に解説し、あなたの設計判断に役立つ知識を提供します。

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目次

SUS303とSUS304のJIS規格と分類

SUS303およびSUS304は、JIS G 4303「ステンレス鋼棒」に規定されるオーステナイト系ステンレス鋼の代表的な鋼種です。
SUS304は「18Cr-8Ni鋼」として知られ、クロム18%、ニッケル8%前後を含有し、ステンレス鋼の標準ともいえる存在です。
一方SUS303は、SUS304の組成をベースに硫黄(S)とリン(P)を添加し、切削加工性を高めた改良鋼です。

項目 SUS303 SUS304
規格 JIS G 4303 JIS G 4303
系統 オーステナイト系 オーステナイト系
主な用途 切削部品、ねじ、シャフト 建材、食品機器、装飾品
添加元素 S, P(切削性向上) 低S・低P(耐食性重視)
JIS規格に基づくSUS303とSUS304の基本比較

化学組成の違いが生む特性の差

SUS303における硫黄(S)添加は、金属内部にMnS(硫化マンガン)介在物を生成し、切削時のせん断面を滑らかにします。
これにより切粉が短く、工具寿命が向上するため、旋削・フライス加工において高い生産性を発揮します。

一方で、このMnS介在物が腐食起点となるため、SUS304に比べて耐孔食性が低下します。
そのため、耐食性や清潔性が求められる食品・化学用途ではSUS304が圧倒的に優勢です。

代表的な化学成分(JIS規格値)

元素 SUS303(wt%) SUS304(wt%)
炭素(C) ≦ 0.15 ≦ 0.08
クロム(Cr) 17.0〜19.0 18.0〜20.0
ニッケル(Ni) 8.0〜10.0 8.0〜10.5
硫黄(S) 0.15前後 ≦ 0.03
リン(P) 0.2前後 ≦ 0.045

機械的特性・加工性の違い

SUS303の強みは切削性にあり、CNC旋盤やマシニングセンタで高精度・大量生産を行う部品加工に最適です。
工具との摩擦係数が小さく、切粉の処理が容易なため、生産効率が大幅に向上します。

逆にSUS304は延性・靱性に優れる反面、切削抵抗が高く、バリや焼き付きが発生しやすいのが課題です。
しかし、冷間加工や溶接後の靱性保持性に優れており、建築部材や溶接構造部品などに適しています。

耐食性・耐熱性・磁性の違い

耐食性能はSUS304が圧倒的に優れ、塩水や酸性環境でも安定したパッシブ膜を形成します。
SUS303はMnS介在物が点食を誘発することがあり、湿潤環境や塩分を含む大気では錆の発生リスクが高まります。

耐熱性については、両者とも約870℃程度まで酸化皮膜を保持しますが、長時間高温下での安定性はSUS304が上です。
また、両者ともオーステナイト系であるため非磁性ですが、冷間加工後に若干の磁性を帯びることがあります。

溶接性と表面仕上げ性

SUS304は溶接適性が極めて良好で、TIG・MIG・スポット溶接のいずれにも対応します。
SUS303は硫黄による亀裂リスクがあるため、溶接後の機械的強度を重視する用途には不向きです。

表面仕上げでは、SUS303は加工表面が比較的滑らかになりやすく、光沢仕上げも得やすい傾向にあります。
そのため外観品質を重視する精密機器の小物部品にも使用されます。

食品・医療・建築での選び方

  • 食品装置・厨房設備 → SUS304(衛生・耐薬品性が重要)
  • 医療器具 → SUS304(腐食・酸化リスクが低い)
  • 自動車部品・ねじ類 → SUS303(高効率切削)
  • 装飾・デザインパーツ → 仕上げ性の良いSUS303も有効

コスト・調達性・代替材との比較

市場価格では、SUS303とSUS304はほぼ同等ですが、供給量・需要の多さからSUS304のほうが入手しやすく、在庫安定性にも優れます。
一方で、量産切削部品における工具寿命・加工時間を考慮すると、トータルコストではSUS303が有利になる場合もあります。

よくある質問(FAQ)

Q1. SUS303とSUS304はどのような場面で使い分けるべきですか?
SUS303は切削性を重視する部品加工向け、SUS304は耐食性や衛生面を重視する環境向けに適しています。例えば、ねじ・シャフトなどはSUS303、食品装置や建築部材はSUS304が最適です。ステンレス鋼の種類と系統の違いに関して解説で、さらに詳しく材質選定のポイントを紹介しています。また、JIS規格の定義はJIS公式サイトで確認できます。

Q2. SUS303はなぜ耐食性が低いといわれるのですか?
SUS303には硫黄(S)が添加されており、これがMnS介在物として金属内部に存在するため、点食の原因になりやすいからです。そのため湿潤環境や塩分を含む空気中では錆びやすくなります。

Q3. SUS304は切削加工に不向きとされるのはなぜですか?
SUS304は延性が高く、加工時に切削抵抗が大きくなるため、バリや焼き付きが発生しやすいという特徴があります。そのため、工具摩耗が進みやすく、精度管理に工夫が必要です。

Q4. SUS303やSUS304の溶接はどのような点に注意が必要ですか?
SUS304は溶接性が非常に良好でTIG・MIG溶接に対応しますが、SUS303は硫黄による割れリスクがあり、構造強度が要求される溶接には不向きです。


まとめ:設計意図に応じて最適な材質選定を

SUS303は切削性を最大化した生産効率型ステンレス、SUS304は耐食性・溶接性を両立した万能ステンレスです。
どちらを選ぶかは、「使用環境」と「加工工程」の優先度で決まります。

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