ステンレス旋盤ねじ切りの注意点|失敗を防ぐ加工ポイントと対策

ステンレスの旋盤ねじ切りで失敗が起きやすい理由
ステンレスのねじ切り加工は、一般的な炭素鋼と比較してトラブルが発生しやすい加工の一つです。旋盤でのねじ切りでは、寸法精度・表面粗さ・刃具寿命のすべてに影響が出やすく、適切な条件設定が不可欠です。
主な原因は以下の材料特性にあります。
- 加工硬化しやすい
- 熱伝導率が低く切削熱が集中する
- 粘りが強く切りくずが絡みやすい
- 溶着(ビルドアップエッジ)が発生しやすい
特にオーステナイト系(SUS304など)は加工硬化が顕著で、工具摩耗や寸法不良の原因となります。
ねじ切り前に理解すべきステンレスの切削特性
加工硬化による刃先摩耗の加速
ステンレスは切削時に塑性変形が起こり、表面が急激に硬化します。この加工硬化層を再度削ることで工具摩耗が急速に進行します。
対策として重要なのは以下です。
- 一度で確実に切削する切込み設定
- 逃げ加工や空走を避ける
- 切れ味の良い工具を使用する
熱集中による焼き付きと溶着
熱伝導率が低いため、刃先温度が上昇しやすく溶着が起こります。これにより山形状が崩れ、ねじ精度が低下します。
ステンレスねじ切りに適した工具選定
工具材質の選び方
工具材質の選定は加工安定性を大きく左右します。
| 工具材質 | 特徴 | 適合性 |
|---|---|---|
| 超硬(PVDコーティング) | 耐摩耗性・耐溶着性が高い | ◎ |
| サーメット | 耐熱性が高い | ○ |
| ハイス | 靭性は高いが摩耗しやすい | △ |
コーティングの重要性
TiAlNやAlCrNなどの耐熱コーティングは溶着防止に効果的です。ねじ加工においては耐摩耗性より耐溶着性を重視することが重要です。
最適な切削条件の設定ポイント
切削速度
ステンレスは高速すぎると発熱が増加し、低速すぎると溶着が起こりやすくなります。
- SUS304目安:30〜80 m/min
- 小径ねじ:やや低速設定が安定
送りと切込み量
ねじ切りでは段階的な切込み設定が重要です。
例:ピッチ1.5mm 1回目:0.25 2回目:0.20 3回目:0.15 仕上げ:0.05
最後の仕上げ切込みを小さくすることで、加工硬化層の影響を最小化できます。
切削油の使用
乾式加工は焼き付きの原因となるため、極圧添加剤入りの切削油を使用します。
- 硫黄系・塩素系添加剤入り油剤
- 十分な供給量で冷却と潤滑を両立
ねじ精度を左右する加工テクニック
びびり振動の防止
びびりはねじ山の粗れや寸法不良を引き起こします。
- 突き出し量を最小限にする
- 工具ホルダ剛性を高める
- 回転数を微調整する
切りくず処理の工夫
ステンレスは長く連続した切りくずになりやすいため、チップブレーカ形状の選定が重要です。
よくあるトラブルと対策
| トラブル | 原因 | 対策 |
|---|---|---|
| 焼き付き | 熱集中・潤滑不足 | 切削油増量・速度調整 |
| 山の崩れ | 溶着・摩耗 | コーティング工具使用 |
| 寸法不良 | びびり・加工硬化 | 切込み調整・剛性向上 |
| 工具欠損 | 過大切込み | 段階切削 |
材質別の注意点(SUS系)
SUS303
快削性が高く比較的加工しやすい。
SUS304
加工硬化が強く、最も注意が必要。
量産加工で品質を安定させるポイント
- 工具摩耗の定期チェック
- 切削油濃度管理
- 加工条件の標準化
- 初品検査による山形状確認
量産現場では再現性の確保が重要です。
よくある質問
まとめ:ステンレスねじ切り成功の鍵
ステンレスの旋盤ねじ切りでは、
- 加工硬化を前提とした切削条件設定
- 耐溶着性に優れた工具選定
- 十分な潤滑と冷却
- びびり防止と剛性確保
これらを徹底することで、不良の削減・工具寿命延長・安定した量産品質を実現できます。適切な知識と条件管理こそが、ステンレス加工の品質を決定づける重要な要素です。

