ステンレス旋盤加工の注意点|切削性の特徴と失敗を防ぐポイント

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目次

ステンレスの切削性が悪いと言われる理由

ステンレス鋼の切削性は、炭素鋼やアルミニウムと比較すると明らかに劣ります。その原因は材料の物理特性と金属組織にあります。

加工硬化しやすい性質

オーステナイト系ステンレス(SUS304など)は加工時の塑性変形によって急激に硬化します。この加工硬化層が次の切削抵抗を増大させ、工具摩耗や刃先欠損の原因になります。

粘り強く切りくずが伸びやすい

延性が高いため切りくずが長く連続し、工具やワークに巻き付きやすくなります。これにより加工面に傷がついたり、工具破損の原因になります。

熱伝導率が低く刃先温度が上昇しやすい

ステンレスは熱伝導率が低いため、切削熱が刃先に集中します。その結果、工具の摩耗が進行し、焼付きや溶着が発生しやすくなります。

高い靭性による切削抵抗の増大

靭性が高いため材料が変形しながら削られ、切削抵抗が増加します。これがびびり振動や工具寿命低下につながります。

ステンレス鋼の種類別 切削性の違い

ステンレスは種類によって加工性が大きく異なります。用途に応じた材質選定が重要です。

種類 代表材 切削性 特徴
オーステナイト系 SUS304 低い 加工硬化が強い・耐食性◎
フェライト系 SUS430 加工硬化が少ない
マルテンサイト系 SUS420J2 比較的良好 硬度が高い
快削ステンレス SUS303 良好 硫黄添加で切削性改善

旋盤加工で発生しやすいトラブル

工具摩耗の急激な進行

刃先温度上昇と加工硬化層の影響により摩耗が急速に進みます。特に低速・送り不足では摩耗が加速します。

焼付き・溶着

材料が工具に付着し、刃先に溶着することで加工面粗さが悪化します。

びびり振動(チャタリング)

切削抵抗の増大と工具突出し量の影響により振動が発生しやすくなります。

切りくずの巻き付き

長い切りくずがワークや工具に絡み、表面傷や破損の原因になります。

旋盤加工で重要な工具選定

超硬工具の使用

耐熱性・耐摩耗性に優れる超硬工具が推奨されます。

コーティング工具の活用

  • TiAlNコーティング:耐熱性向上
  • AlCrNコーティング:耐酸化性向上
  • TiCN:耐摩耗性向上

ポジティブすくい角工具の採用

切削抵抗を低減し、発熱と加工硬化を抑制できます。

最適な切削条件の設定

切削速度

高すぎると焼付き、低すぎると加工硬化が進みます。中速域で安定加工を目指します。

送り量

適切な送り量を確保することで加工硬化層の再切削を防ぎます。

切込み量

浅すぎる切込みは加工硬化層を削るだけになり逆効果です。

条件 推奨傾向
切削速度 中速域で安定化
送り量 やや大きめで硬化層回避
切込み 浅すぎない設定

冷却と潤滑が加工品質を左右する

切削油の役割

  • 刃先温度の低減
  • 溶着防止
  • 工具寿命の延長
  • 加工面品質の向上

湿式加工が推奨される理由

ドライ加工では刃先温度が急上昇し、摩耗と焼付きの原因となります。

加工硬化を防ぐための実践ポイント

  • 刃先を止めない連続切削
  • 低送りの擦り加工を避ける
  • 摩耗工具を使い続けない
  • 切削条件を安定させる

設計段階でできる加工性改善の工夫

角部Rの付与

急激な切削負荷を避け工具負担を軽減します。

深穴・細溝形状の回避

切りくず排出性を改善しトラブルを防ぎます。

現場で差がつく加工安定化のチェックリスト

  • 工具摩耗の定期確認
  • 切削油供給状態の確認
  • 切りくず排出状況の確認
  • びびり音の早期検知
  • 加工硬化兆候の確認

旋盤加工の品質トラブル対策については、
旋盤加工トラブル対策に関して解説で詳しく解説しています。

ステンレス旋盤加工を成功させるためのまとめ

ステンレスは優れた性能を持つ一方で、加工硬化・発熱・粘りといった特性により難削材とされています。しかし、材料特性を理解し、適切な工具選定、切削条件設定、冷却管理を行うことで安定加工が可能になります。

ステンレス 切削性 旋盤加工注意点を理解することは、工具寿命の延長、品質向上、コスト削減、安全な加工環境の実現に直結します。加工トラブルを経験則ではなく理論で解決することが、これからの製造現場に求められる重要な視点です。

よくある質問

なぜステンレスは他の金属より削りにくいのですか?
ステンレスは加工時に急激に硬くなる「加工硬化」、粘りによる切りくずの絡みやすさ、熱が刃先に集中する低い熱伝導率などの特性を持っています。これらが切削抵抗の増加や工具摩耗、焼付きの原因となり、炭素鋼やアルミニウムに比べて切削性が低い材料とされています。
旋盤加工で工具摩耗や焼付きが起きやすいのはなぜですか?
ステンレスは切削熱が刃先に集中しやすく、さらに加工硬化層を再切削することで工具に大きな負荷がかかります。その結果、刃先温度が上昇し摩耗が加速し、材料が工具に付着して焼付きや溶着が発生します。適切な切削速度、送り量、冷却が重要です。
ステンレスの種類によって加工のしやすさは変わりますか?
はい、大きく異なります。SUS304などのオーステナイト系は加工硬化が強く切削性が低い一方、SUS430などのフェライト系は比較的加工しやすい特性があります。また、硫黄を添加した快削ステンレス(SUS303)は切りくず分断性が良く、旋盤加工の効率向上に適しています。
加工硬化を防ぐために現場で意識すべきポイントは何ですか?
刃先を止めない連続切削、低送りによる擦り加工の回避、適切な送り量と切込み設定が重要です。また、摩耗した工具を使い続けると硬化層を削る負荷が増大します。切削条件の安定化と十分な切削油の供給により、加工硬化の進行を抑制できます。
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このコラムの著者

この記事は精密加工専門のフィリール株式会社が
実務経験をもとに作成しています。
医療・半導体・精密部品の切削加工実績あり。
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