焼き入れ不要高硬度鋼材NAK材の特長と利点とは?

「焼き入れ不要高硬度鋼材のNAK材について、もっと知りたいけれど、どこから手を付ければいいのか……」そんな悩みを抱えている方にお届けするのが、このガイドです。
NAK材は、その名の通り、焼き入れを行わなくても高い硬度を維持することができる特別な鋼材です。この鋼材は、さまざまな分野での用途が広がっており、特に機械部品や金型の製造において、その特長が活かされています。
この記事をご覧いただくことで、
- NAK材とは何か?
- どのような利点があるのか?
- 具体的な応用例や特徴について知りたい!
といった疑問を解決し、焼き入れ不要高硬度鋼材の魅力を深く理解することができるでしょう。
信頼性と耐久性を兼ね備えたNAK材は、あなたのプロジェクトにとって心強いパートナーになること間違いありません。このガイドでは、NAK材の特長とその利点を詳しく解説し、あなたの選択に役立つ情報を提供します。さあ、NAK材の世界へ一緒に踏み出してみましょう!
焼き入れ不要高硬度鋼材 NAK材の特長と利点
焼き入れ不要高硬度鋼材 NAK材とは
NAK材(NAK55やNAK80に代表されるNAK系鋼)は、特殊鋼メーカー大同特殊鋼が開発したプレハードン鋼(焼き入れ不要で既に高硬度に調整された鋼材)です。硬度は出荷時点でHRC37前後を有し、焼き入れや焼き戻しなどの熱処理を省略できるため、加工効率と製品の精度安定性が高く評価されています。
- 種類:NAK55(高切削性)、NAK80(鏡面性重視)
- 硬度:HRC37〜40(機械加工後そのまま使用可能)
- 主な成分:Ni, Cr, Mo などを含む特殊成分配合
焼き入れ不要高硬度鋼材 NAK材の利点
- 焼き入れ工程が不要
機械加工後にそのまま製品として使用可能なため、熱処理による歪みや寸法変化が発生せず、後工程の工数削減に直結します。 - 高精度の確保が容易
熱処理を伴わないため、寸法公差を厳密に守ることができ、金型や精密部品の製作に適しています。 - 加工性が高い
焼き入れ鋼と異なり、切削性や放電加工性が良好であり、工具寿命にも優れています。 - 鏡面仕上げやテクスチャ対応も可能(NAK80)
金型の外観品質を求める用途にも対応可能です。
焼き入れ不要高硬度鋼材 NAK材の用途
- プラスチック金型(特に射出成形用)
- 精密部品、治工具
- 光学部品の金型(鏡面性が求められる箇所)
- 微細加工を必要とする金型部位
NAK55材の切削性と耐食性
NAK55材の切削性の特徴
NAK55は、NAK材の中でも特に「高い切削性」に焦点を当てた材料です。機械加工中の工具摩耗を抑え、長時間の連続加工にも対応するため、生産性を大きく向上させます。
- 切削抵抗が低いため、加工時間の短縮が可能
- 工具摩耗を軽減し、工具寿命が長くなる
- 放電加工やワイヤーカットとの相性も良い
特に、複雑形状の金型や部品では、高硬度でありながらも快削性に優れるNAK55の性能が活きてきます。
NAK55材の耐食性の重要性
NAK55は、ステンレスほどの耐食性は持ちませんが、NiやCrの含有により、一般的な機械構造用鋼材に比べて優れた耐食性を備えています。これにより、以下のような現場課題を解決します。
- 金型の錆による寸法変化や製品不良の防止
- 湿度の高い保管環境でも腐食の進行を抑制
- 防錆油や乾燥材の使用頻度を削減可能
NAK55材の加工における実績
NAK55は、以下のような実績で高い信頼を得ています。
- 国内外の自動車メーカーが金型製作用材として採用
- 家電業界や医療機器業界でも広く使用されている
- 5軸加工機やマシニングセンタによる微細加工への対応も実績豊富
これらの背景から、NAK55は「高精度・高硬度・高効率」を同時に求められる金型業界において、非常に価値の高い鋼材と評価されています。
プリハードン鋼の特性と規格
プリハードン鋼の基本特性
プリハードン鋼とは、出荷時点であらかじめ所定の硬度(通常HRC30〜40)に熱処理された鋼材で、焼き入れや焼き戻しが不要な鋼種です。主に金型用材料として使われ、加工性、寸法安定性、経済性に優れる点が特徴です。
- 出荷時に高硬度を有し、直接加工して使用可能
- 熱処理による歪みの心配が不要
- 耐摩耗性・耐圧性に優れる
- ステンレス鋼に比べ、コストパフォーマンスが高い
プリハードン鋼の規格と選定基準
プリハードン鋼には複数の種類があり、用途や仕上げ要求に応じて選定されます。
代表的なプリハードン鋼材と規格:
- NAK55(大同特殊鋼):切削性重視、HRC37前後
- NAK80(大同特殊鋼):鏡面性と放電加工性に優れる
- PX5(日立金属):一般的な金型用、均一な硬度
- HPM38(日立金属):高研磨性が特徴
選定基準:
- 加工内容(切削、放電、磨き)
- 仕上げ精度(鏡面要求の有無)
- 使用環境(腐食、摩耗の頻度)
- 成形対象(樹脂、金属など)
プリハードン鋼の利点と欠点
利点:
- 焼き入れ工程が不要で加工時間を短縮できる
- 加工後の寸法安定性が高く、精密仕上げが可能
- 熱処理によるひずみ・割れのリスクを回避できる
欠点:
- 焼き入れ鋼に比べ、耐摩耗性や硬度がやや劣る
- 耐食性に限界があり、錆の管理が必要
- 高温環境では硬度が低下する可能性がある
NAK材の加工におけるポイントと注意点
NAK材の加工方法
NAK材は機械加工性に優れており、以下のような加工法に適しています。
- マシニングセンタでのフライス加工
- 放電加工(特にNAK80は適性が高い)
- 旋盤加工、穴あけ、ねじ切りなどの汎用加工
- 鏡面研磨やショットブラストなどの表面仕上げ
硬度が均一で熱処理後の歪みが無いため、高精度部品の一発仕上げが可能です。
NAK材加工時の注意点
- 高硬度ゆえに工具摩耗が発生しやすいため、コーティング工具(TiAlNなど)の使用が望ましい
- クーラントを十分に使用し、発熱による寸法変化を抑制する
- 放電加工ではアノード効果による表面硬化を意識し、仕上げ加工の余裕を設ける
また、精密加工時には熱膨張係数も考慮し、加工環境の温度管理が重要です。
NAK材の仕上げ処理
NAK材の最終仕上げは用途によって異なります:
- 射出成形金型の場合:鏡面研磨(#1500〜#2000)、鏡面度を均一化
- 高級意匠品の場合:鏡面+放電テクスチャ
- 摩耗が懸念される用途:表面処理(窒化処理やTiNコートなど)を追加するケースもあり
高硬度鋼材の選定におけるメリット・デメリット
高硬度鋼材のメリット
- 耐摩耗性が高く、長寿命の金型や部品に適している
- 高荷重・高圧条件下でも変形しにくく、高い寸法精度を保持
- 表面品質が安定し、鏡面やテクスチャ対応も可能
特に、生産ロット数が多く、成形頻度が高い場合にコストメリットが大きくなります。
高硬度鋼材のデメリット
- 工具摩耗が激しく、加工コストや時間が増加する傾向
- 加工中の熱影響でクラックや歪みが発生しやすい
- 高硬度ゆえに再加工や修正が難しいこともある
これらのデメリットを補うためには、高性能工具や高精度加工機の導入が不可欠となります。
高硬度鋼材の選定基準
- 使用条件(摩耗、衝撃、腐食)に基づく材料の機械的特性
- 加工方法との相性(切削性、研削性、放電適性)
- 仕上げ要求(表面品質、寸法精度、意匠性)
- 生産数量とコストバランス
以上を総合的に考慮し、必要に応じてプリハードン鋼や他の熱処理鋼種との使い分けが求められます。
まとめ
焼き入れ不要高硬度鋼材NAK材は、優れた硬度と耐摩耗性を持ちながら、熱処理を必要としないため、加工が容易です。これにより、製造コストの削減や工程の短縮が実現できます。また、耐食性にも優れており、様々な産業での用途が広がっています。