ハステロイの成分・比重・特性とは?高耐食合金の特徴と用途を徹底解説

「ハステロイとは何か?」という疑問は、化学プラントやエネルギー産業に携わる方にとって重要なテーマです。
本記事では、ハステロイの成分・比重・特性を詳細に解説し、具体的な用途や選び方についても触れていきます。
特に腐食環境における耐久性や強度が注目されるため、産業分野での活用ポイントを理解することが欠かせません。
ハステロイとは

ハステロイ(Hastelloy)は、米国Haynes International社が開発した耐食合金の総称で、主にニッケルを基盤にモリブデン、クロム、鉄、コバルトなどを含む特殊合金です。
高い耐酸性・耐アルカリ性を備え、特に化学工業分野で不可欠な素材として利用されています。
JISでも一部の規格が定義されており、用途に応じてグレードが細分化されています。
代表的な用途としては、化学プラントの配管・熱交換器、海水淡水化装置、ガス処理設備、医療機器などが挙げられます。
ステンレス鋼やチタン合金よりも優れた耐食性能を持つため、極めて過酷な条件下で重宝されるのです。
さらに詳しい金属材料の基礎解説はこちらの記事で確認できます。
ハステロイの成分
ハステロイは特定の1種類ではなく、C-22、C-276、B-2など複数のグレードが存在し、それぞれ成分比率が異なります。
基本的な特徴は以下の通りです。
ハステロイC-22:Ni 56%、Cr 22%、Mo 13%、Fe 3%、W 3% ハステロイC-276:Ni 57%、Mo 16%、Cr 15%、Fe 5%、W 4% ハステロイB-2:Ni 70%、Mo 28%、Fe 2%
成分の違いにより、耐酸化性や耐塩化物腐食性に優劣が生じます。特にMo(モリブデン)含有量が高いグレードは耐塩酸性に強く、クロムが多いものは耐酸化性が高まります。
成分規格の詳細はJIS公式サイトでも確認できます。
ハステロイの比重
ハステロイの比重はおおむね8.9〜9.2 g/cm³の範囲にあり、ステンレス鋼(約7.9 g/cm³)よりも重い特徴があります。
この高比重はニッケル・モリブデンを多く含むためであり、強度と耐食性を両立するために必要な構造です。
例えばハステロイC-22の比重は約8.9、C-276は約9.2とされ、実際の加工や設計では重量影響を考慮する必要があります。
金型や圧力容器など重量制限がある設備では、構造設計段階で材質選定を行うことが重要です。
材料選定のポイントについてはこちらの記事で詳しく紹介しています。
ハステロイの特性
耐食性
ハステロイは酸・アルカリ両方に対して非常に強い耐食性を持ち、特に塩酸・硫酸・リン酸などの強酸環境において優位性を発揮します。
これはクロムやモリブデンの効果により、腐食生成物の皮膜が安定して形成されるためです。
化学プラントで長期間安定稼働が可能になる大きな要因のひとつです。
高温強度
ハステロイは600〜1000℃の高温環境でも強度を保持できるため、熱交換器やボイラー部品に使用されます。
酸化スケールが形成されにくいため、熱サイクルの繰り返しに対しても耐久性が高い点が特徴です。
加工性
ハステロイは硬度が高く、加工には超硬工具や放電加工が必要となります。
ただし延性も兼ね備えており、圧延や鍛造にも対応可能です。精密加工を行う際には切削条件の最適化が不可欠です。
用途と選び方

ハステロイは以下のような分野で活用されます。
- 化学プラントの配管・熱交換器
- 発電設備(ボイラー、ガスタービン部品)
- 海洋関連設備(海水淡水化、船舶部品)
- 医療機器(耐腐食性インプラント)
選定の際には以下の観点が重要です。
- 腐食環境(酸・塩・ガスの種類と濃度)
- 温度条件(常温〜高温領域)
- コストと調達性
特にモリブデンやクロム含有量の違いによる性能差を把握することが、適材適所の設計につながります。
よくある質問
Q. ハステロイとステンレス鋼の違いは何ですか?
Q. ハステロイの比重はどのくらいですか?
Q. ハステロイはどのような産業で使われますか?
まとめ
本記事では「ハステロイとは」という基本から、成分・比重・特性について詳しく解説しました。
ハステロイは過酷な腐食環境に耐えるニッケル基合金であり、化学産業やエネルギー産業で不可欠な材料です。
成分バリエーションにより性能が変化するため、使用環境に応じて適切なグレードを選定することが重要です。