エンドミルの種類と使い分け完全ガイド|加工効率を最大化する選定ポイント

エンドミルの種類と使い分け完全ガイド|加工効率を最大化する選定ポイント
金属や樹脂の切削加工で欠かせない工具がエンドミルです。しかし「エンドミルにはどんな種類があるのか?」「スクエアとボールの違いは?」「加工に合った選び方は?」と疑問を持つ方も多いでしょう。本記事では、エンドミルの種類ごとの特徴と用途を徹底的に解説し、失敗しない工具選定のポイントを紹介します。
エンドミルとは何か?基本構造と役割
エンドミルとは、回転切削工具の一種で、主にフライス盤やマシニングセンタで使用されます。外周と底面に切刃を持ち、さまざまな方向に切削が可能です。特徴は以下の通りです。
- 多様な加工に対応:平面加工、溝加工、曲面加工など。
- 刃形状による差別化:スクエア刃、ボール刃、ラジアス刃など。
- 材質選定の幅広さ:超硬、ハイス、コーティング有無など。
特に精密部品加工では、エンドミルの選定が仕上がり精度やコストに直結します。さらに詳しい基礎情報はJIS規格(日本規格協会)でも定義されています。
エンドミルの代表的な種類
スクエアエンドミル
スクエアエンドミルは刃先が直角で、最も基本的なタイプです。平面加工や溝加工に用いられ、切削面の精度も高いのが特徴です。
具体的な用途は以下の通りです。
- 平面の仕上げ加工
- 溝やポケット加工
- 段差加工
実務においては、一般的な部品加工の7割以上でスクエアタイプが利用されています。
ボールエンドミル
ボールエンドミルは刃先が球状になっており、三次元形状や曲面加工に最適です。金型加工や複雑形状の仕上げに欠かせない工具です。
特徴としては次の通りです。
- 金型のキャビティ加工に強い
- 自由曲面の切削に対応
- 仕上げ精度が高い
特に航空機部品や自動車の金型製作では頻繁に用いられます。
ラジアスエンドミル
ラジアスエンドミルは、刃先の角に小さなR(丸み)がついているのが特徴です。角部の欠け防止や工具寿命の延長に効果的です。
- コーナー部の補強で耐久性アップ
- 加工面の強度が増す
- 高硬度材の加工に有効
テーパエンドミル
テーパエンドミルは、刃全体がテーパー状になっており、深いポケットや傾斜のある形状の加工に適しています。
具体的には以下の場面で使われます。
- 金型の抜き勾配加工
- 深穴や溝の加工
- 傾斜面を持つ部品の切削
特殊形状エンドミル
標準品では対応できない場合、特殊形状エンドミルが使われます。例えば、片側だけに刃を持つ「片刃エンドミル」や、溝専用の「Tスロットカッター」などがあります。
これらは特注や特殊加工向けに設計され、効率的な生産を支えています。
刃数による分類と特性
エンドミルは刃数(フルート数)によっても性能が変わります。
刃数 | 特徴 | 主な用途 |
---|---|---|
2枚刃 | 切削抵抗が小さく切りくず排出性が高い | アルミや樹脂などの非鉄金属加工 |
3枚刃 | バランスが良く汎用性が高い | 鉄鋼から非鉄まで幅広い加工 |
4枚刃 | 剛性が高く仕上げ精度が良い | 金型加工、硬質材加工 |
多刃(6枚以上) | 加工能率が高いが切りくず排出性に注意 | 高硬度材や量産加工 |
エンドミル材質とコーティング
エンドミルの性能は材質と表面処理で大きく変化します。
- 超硬合金:耐摩耗性が高く、長寿命。
- ハイス鋼:靭性に優れ、コストが安い。
- コーティング(TiAlN, DLCなど):摩擦低減と耐熱性を向上。
エンドミル選定のポイント
エンドミルを選ぶ際は以下の条件を考慮する必要があります。
- 加工材質(鉄鋼、アルミ、樹脂など)
- 必要な精度(粗加工か仕上げか)
- 加工方法(側面加工、溝加工、曲面加工など)
- 機械の剛性や保持力
- コストと寿命のバランス
特に「高硬度材を仕上げ加工する場合にはボール+コーティングタイプが有効」といった選定基準は、実務での成果に直結します。
よくある質問(FAQ)
まとめ|エンドミルの正しい選定が加工品質を左右する
エンドミルは形状・刃数・材質・コーティングによって性能が大きく変わります。スクエア、ボール、ラジアス、テーパ、それぞれの特徴を理解し、加工条件に応じて正しく使い分けることが重要です。本記事が、皆さまの加工精度向上と効率改善の一助となれば幸いです。