アルミニウム旋盤加工における切削条件の基準とは

アルミ材料そのものの基礎特性については「アルミニウムの物性値に関して解説」で詳しく解説しています。
アルミニウムが「削りやすい」と言われる理由と落とし穴
アルミニウムは鉄鋼材料に比べて比重が小さく、塑性変形しやすいため切削自体は軽快に進みます。しかし一方で以下のような特徴が、切削条件設定を難しくします。
- 刃先に溶着(ビルトアップエッジ)が発生しやすい
- 高速回転で発熱しやすい
- 切りくずが長く連続しやすい
- 材質による硬さのばらつきが大きい
これらを無視して鉄鋼用の条件を流用すると、工具寿命の極端な低下や仕上げ面の荒れが発生します。アルミ特有の切削挙動と条件最適化については「アルミ切削トラブルの原因と対策に関して解説」で詳しく解説しています。
アルミ旋盤加工における切削条件の基本3要素
アルミニウム旋盤加工の切削条件は、次の3要素で構成されます。
| 項目 | 内容 | 加工への影響 |
|---|---|---|
| 回転数(n) | 主軸の回転速度 | 切削抵抗・発熱・工具寿命 |
| 送り(f) | 1回転あたりの送り量 | 面粗度・能率 |
| 切込み(ap) | 刃物の食い込み量 | 切削負荷・たわみ |
これらは単独で最適化するのではなく、相互にバランスを取りながら設定する必要があります。
アルミ旋盤加工における切削速度の基準
切削速度は次式で求めます。
切削速度 V = π × D × n ÷ 1000
ここでDは加工径(mm)、nは回転数(min⁻¹)です。
一般的なアルミ合金の切削速度基準は以下が目安となります。
| 工具材質 | 切削速度V(m/min) |
|---|---|
| 超硬工具 | 300〜800 |
| ハイス | 150〜300 |
例えば外径50mm、超硬工具、V=500m/minの場合の回転数は以下の通りです。
n = 1000 × 500 ÷ (π × 50) ≒ 3183 min⁻¹
このように切削条件の基準は必ず計算に基づいて設定する必要があります。
送り量の基準と面粗度への影響
送りは加工能率と仕上げ品質を支配する重要因子です。アルミ旋盤加工における代表的な送り基準は以下の通りです。
| 加工区分 | 送り f(mm/rev) |
|---|---|
| 荒加工 | 0.15〜0.35 |
| 中仕上げ | 0.10〜0.20 |
| 仕上げ | 0.05〜0.12 |
送りを過大にするとびびり・面粗度悪化・工具欠損を招き、過小にすると溶着と異常摩耗が発生しやすくなります。
切込み量の基準と負荷の考え方
切込みは加工時間と変形リスクに直結します。
| 加工区分 | 切込み ap(mm) |
|---|---|
| 荒加工 | 1.0〜3.0 |
| 中仕上げ | 0.5〜1.0 |
| 仕上げ | 0.1〜0.3 |
切込みを深くしすぎるとワークのたわみ・芯ズレ・寸法不良の原因になります。薄肉部品については「薄肉アルミ部品の旋盤加工に関して解説」で詳しく解説しています。
アルミ合金材質別の切削条件基準
アルミ合金は成分系によって切削性が大きく異なります。
| 材質例 | 特徴 | 切削条件の傾向 |
|---|---|---|
| A1050 | 純アルミ系・軟質 | 高速・低送り・溶着注意 |
| A5052 | 中強度・汎用 | 標準条件で安定 |
| A6061 | 高強度・切削性良好 | 高速切削可能 |
工具材質と切削条件の基準関係
工具材質は切削条件の上限値を決定します。
- 超硬工具:高速・多量送りに適し量産向き
- ハイス工具:低速・少量生産向き
- ダイヤモンド工具:鏡面加工・非鉄専用
特に超硬工具では切削速度を上げすぎると熱集中による欠損が起こるため、基準値の範囲内運用が必須となります。
切削油(クーラント)と切削条件の関係
アルミ旋盤加工では切削油の有無で条件設定が大きく変わります。
- 湿式:溶着抑制、面粗度安定、高寿命
- 乾式:環境負荷低減、ただし溶着リスク増加
クーラント使用時は切削速度を1.2〜1.5倍程度まで引き上げ可能なケースもあります。
アルミ旋盤加工における切削条件の実務的決定手順
アルミ旋盤加工の切削条件は、次の順序で決めると安定します。
- 材質(A5052、A6061など)の特定
- 工具材質の選定
- 切削速度の設定
- 送りの設定
- 切込みの設定
- 試削による微調整
この手順を省略して感覚設定すると、不良率・工具費が大幅に増加します。
切削条件を外した場合に発生する代表的トラブル
- ビルトアップによる寸法バラつき
- 工具摩耗の急増
- 面粗度不良・むしれ
- 加工焼け・熱変形
これらはすべて切削条件の基準逸脱が主因となります。
まとめ|アルミ旋盤加工の切削条件基準は「計算+実測」で決定する
アルミニウム旋盤加工の切削条件の基準は、理論計算で初期値を決め、実加工で微調整することが最も合理的です。回転数・送り・切込みを材質・工具・形状に応じて最適化することで、精度・コスト・工具寿命すべてを同時に安定化できます。
試作や量産で切削条件に迷った場合は、基準値からの微調整を必ず行い、再現性の高い加工条件を構築することが重要です。

