硬度測定機(硬さ試験機)の特徴とロックウェル硬さ試験機 HR-530/530Lの全貌解説

目次
1. 硬度測定機(硬さ試験機)の選び方
1-1. 硬度測定機の種類
硬度測定機は、試料の硬さを測定するための装置で、試験方法や測定精度に応じてさまざまな種類があります。代表的な硬度測定機の種類は以下の通りです:
- ロックウェル硬度計
ロックウェル試験は、試料に対して一定の荷重をかけ、その押込み深さを測定する方法です。この方法は、比較的簡便で高速に硬度を測定できるため、広範な用途で使用されています。特に金属の硬さ測定に適しており、金属加工業などで広く使用されています。 - ブリネル硬度計
ブリネル硬度試験は、硬質の鋼球を試料に押し込んで、その圧痕の直径から硬度を計算します。特に大型試料や不均一な表面を持つ材料の測定に使用されることが多いです。ブリネル硬度は、特に厚みがある金属や鋳物などで利用されます。 - ビッカース硬度計
ビッカース試験は、ダイヤモンドの四角錐を用いて試料に一定の荷重をかけ、その圧痕の対角線長さから硬度を算出する方法です。非常に高精度で細かい硬度測定が可能で、主に精密機器や材料の微細な測定に使用されます。 - ショア硬度計
ショア硬度試験は、硬度が低い材料、特にゴムやプラスチックなどに適用されます。スプリング式のピストンで材料に圧力を加え、その反発を測定します。ショア硬度は特に柔軟な素材や薄い材料の測定に使用されます。 - ケンプ硬度計
ケンプ試験は、特にプラスチックや軟質金属に適しており、プラスチック業界などで利用されます。標準的な硬度測定ではないため、用途が比較的限られています。
2. 特定の材料に適した硬度測定機
2-1. 金属材料に適した硬度測定機
金属材料の硬度測定には、以下の硬度測定機が一般的に使用されます。金属の種類や試験方法に応じて、最適な硬度測定機を選定することが重要です。
- ロックウェル硬度計
- 用途: 主に鉄鋼や鋳鉄、アルミニウム、銅などの金属材料に使用されます。特に硬度が高い金属に対して優れた精度を発揮します。
- 特徴: 測定が迅速で簡単に行えるため、現場での使用にも適しています。異なるスケール(例:HRA、HRB、HRC)を使用して、広範囲の硬度を測定可能です。
- ビッカース硬度計
- 用途: 軽合金から高強度鋼、さらには金属間化合物などの硬度測定に使用されます。特に微細な圧痕を測定するため、精密な硬度測定が可能です。
- 特徴: ダイヤモンド四角錐を使用して、圧痕の対角線の長さを測定する方式で、特に小さい圧痕を正確に測定できるため、金属の表面の微細な硬さ変化を捉えるのに適しています。
- ショア硬度計
- 用途: 比較的柔らかい金属や合金、特に薄い部品や小さい部品の硬度測定に使用されます。
- 特徴: 使いやすく、ポータブルなため、現場での手軽な測定に適しています。直径が小さく、高精度が必要な場合には他の方法が推奨されます。
2-2. プラスチックやゴムに適した硬度測定機
プラスチックやゴムなどの非金属材料には、金属とは異なる硬度測定機が使用されます。これらの材料は一般的に柔らかいため、特殊な測定方法が求められます。
- ショア硬度計(ショアA・ショアD)
- 用途: ゴムやプラスチック、弾性材料の硬度測定に適しています。特にゴムや柔らかいプラスチックの硬度を測定する際には、ショアAスケールが使用されます。硬いプラスチックやエンジニアリングプラスチックにはショアDスケールが使用されます。
- 特徴: 高い精度で柔軟な素材の硬度を測定できます。手軽で使いやすいため、現場でもよく使用されます。
- ロックウェル硬度計(HR15N・HR30N)
- 用途: 主に軟質プラスチックやゴムの硬度測定に使用されます。ロックウェルNスケール(HR15N、HR30Nなど)を使用して、比較的低い硬度範囲の素材の測定が可能です。
- 特徴: 測定時間が短く、操作が簡単で、簡便に使用できるため、現場でよく利用されます。
- ビッカース硬度計
- 用途: 特に硬度の低いプラスチックや複合材料、薄膜などに使用されます。圧痕の精密な測定を必要とする場合に適しています。
- 特徴: 微細な圧痕を正確に測定できるため、硬度の分布が重要な素材や小さなサンプルに対して適しています。
以上のように、金属材料とプラスチック・ゴムでは適した硬度測定機が異なります。各材料の特性に最も適した測定機を選定することで、より正確な硬度測定を実現できます。
3. ロックウェル硬さ試験機 HR-530/530L
ミツトヨのロックウェル硬さ試験機 HR-530/530L は、1台で多用途な硬さ試験が可能な最新の試験機です。独自の電子制御により、以下の試験が可能です。
- ロックウェル硬さ試験
- ロックウェルスーパーフィシャル硬さ試験
- ブリネル硬さ試験
- 押し込み深さブリネル試験
- プラスチック試験
さらに、内壁の硬さ試験にも対応。タッチパネル表示器には統計演算機能やグラフィック機能が搭載されており、設置スペースを有効活用できます。また、最大値、最小値、平均値などの統計演算やX-R管理図、ヒストグラムの表示も可能です。
仕様
項目 | 仕様 |
---|---|
試験力(N) | スーパーフィシャル:147.1、294.2、441.3 ブリネル:61.29、98.07、153.2、245.2、294.2、306.5、612.9、980.7、1226、1839 ロックウェル:588.4、980.7、1471 |
試験力制御 | 自動 |
試験力切換 | 表示器で操作 |
試験力保持時間(秒) | 1~120(1秒単位で設定可能) |
初試験力(N) | 29.42、98.07 |
パイプ状試料の許容内径(mm) | 最大穴直径35(特別仕様の圧子使用時は22) |
対応規格 | ISO 6508-2、JIS B7726 |
最大積載質量(kg) | 20 |
テーブル上下機構 | 手動(自動ハンドブレーキと自動負荷シーケンス) |
ワーク最大寸法(mm) | HR-530:高さ250、奥行150 HR-530L:高さ395、奥行150 |
データ出力 | RS-232C、USB2.0 TypeB、USB2.0 TypeA(USBメモリ用)、デジマチック |
対応言語 | 日本語、英語、ドイツ語、フランス語、イタリア語、スペイン語、韓国語、中国語(繁体字・簡体字)、トルコ語、ポルトガル語、ハンガリー語、ポーランド語、チェコ語、オランダ語 |
対応硬さ | ロックウェル硬さ、ロックウェルスーパーフィシャル硬さ、ブリネル硬さ、押込み深さブリネル硬さ、プラスチック硬さ |
外観寸法(mm) | HR-530:幅250 × 奥行667 × 高さ621 HR-530L:幅300 × 奥行667 × 高さ766 |
質量(kg) | HR-530:61 HR-530L:70 |
電源 | AC100~240V 50/60Hz |
まとめ
硬度測定機には主にブリネル、ロックウェル、ビッカース、モースなどの種類があります。ブリネルは大きな圧子を用い、材料の硬さを測定。ロックウェルは圧子の深さで硬度を判断し、ビッカースは細かい圧子でより精密な測定が可能です。モースは鉱物の硬度を相対的に比較します。それぞれの特性を理解し、用途に応じた選択が重要です。